バカにするな、だったかな? ミルークの。あんな怒鳴り声、聞いたことない
ジルが間に入らなかったら、そのまま絞め殺してたね。ミルークは、カンカンにブチ切れながら、なんか、紙切れをグチャグチャに握り潰していたっけ
ミルークは深く傷ついたと思う。俺をただの奴隷以上の存在として、大事にしてくれていた。馬小屋で死に掛けた時には、本名で呼びかけてくれたし、今日まで執務室への出入りも自由にさせてくれていた。商売の上での重要な問題についても、いろいろと相談してくれた。そんな彼の信頼を、裏切ってしまったのだ。
「どうすれば、謝罪になると思う」
思わず目を逸らしてしまった。とても見られた顔ではなかった。出来事一つで、日頃の信頼を忘れ去って、暴力に走ったのだ。まさに、居場所のない人間の表情だった。°46
「私は、全力で走る馬の上からでも、同じことができる。次はない」
迂闊な真似をすれば殺す。警告はこれ一回きり。次はいきなり本番だろう。°51