転生前 | 佐伯陽 |
転生時 | ファルス |
シュガ村養子時 | チョコス・ティック |
奴隷時代 | ノール |
下僕時代 | フェイ |
騎士時代(ネッキャメル氏族協力時) | ファルス・リンガ(プノス・ククバン) |
領主時代 | ファルス・リンガ・ティンティナブラム男爵 |
彼が感情的になるのを見たのは、過去に一度しかない。例のウィカクスの件だ。俺が虫になったせいで異常な状態になった時、彼は珍しく俺を本名で呼んだ。あのことについて、俺は特に触れずにいる。彼は、自分で決めたルールを破るほどに、俺を気にかけてくれていた。°42
「私、ノール君みたいな人になるの!」°39
「どうすれば、謝罪になると思う」
思わず目を逸らしてしまった。とても見られた顔ではなかった。出来事一つで、日頃の信頼を忘れ去って、暴力に走ったのだ。まさに、居場所のない人間の表情だった。°46
「今回、僕の無実を明らかにできたのは、ここにいるみんなのおかげです。できたら今度、好きなだけ甘いものを食べさせてやってください」°46
「ノール君のお嫁さんになりたいの」°49
「(だから、お前はそれ以外の……)人智を超えた、何か途方もない、どこか遠くからやってきた存在なのだ」
それは半ば事実であり、間違ってもいる。
(中略)
「私は、そんな特別な何者かを守るために、女神によって遣わされたのではないか、とな」°55
「この馬車は、奴隷の競り市に向かうためのものだが……どうする? ノール、お前はこれに乗るのかな?」°56
俺に今できることを確認もしない。なのに、叩けば叩くほど伸びる少年時代を、こうやって無駄にしてしまうのか。°63
「彼を譲って、いただけませんか。落札額の五倍、金貨三万枚までなら、即座に、お支払いできます」°70
この渦に巻き込まれた男が、その場で崩れ落ちた。その顔は、何百年も生きた後の老人のようになっており、髪の毛は抜けてしまうか、すべて真っ白になっていた。それがジュクジュクと溶解して、なんとか残った爛れた皮膚が縮んで、頭蓋骨にへばりついていく。そのまま彼はうつ伏せに倒れたが、そのまま灰色の煙を吐き出しながら、だんだんと溶けていく。
彼女は指差した先には、もっと地味な品が置かれていた。赤い絹紐に小さな金の留め具がいくつかついただけの代物。腕に結び付けるから、一応腕輪といえるか。宝石すらついていない。多分、この店で一番安い装飾品だ。クララ・ラシヴィアに盗作疑惑をかけたシュウファン・ユンイ?と出会う。°842彼はノーラの父親だった。
そうだ……この手の中には、きっと砂金があるんだ。それは文字通り、ほんの一握りで、まったくささやかなものかもしれないけど。だけど、もし俺に微笑んでくれる人に出会えたなら。俺は惜しげもなく、すべてを差し出す。本当に、宝物というにはあまりにみすぼらしいかもしれないけど、それでも。
ボロ市で、古ぼけた懐中時計を見た時、俺は思い出した。そう、『賢者の贈り物』だ。俺のために大事なものを手放して欲しいんじゃない。むしろ俺から、大切なものを投げ出したくなる、そんな気持ちになれる繋がりに、いつか出会えるなら。°16